第105章 備えあれば憂いなし。
宇宙空間を漂う宇宙船。宇宙海賊、鐡の母船だ。
玲央と紗羅を連れた紅蓮、そして紅蓮に“瑠香”と呼ばれた女は、鐡の母艦へと戻っていた。
戻ってから約一時間後、ようやく玲央の目が覚める。紗羅は玲央が目覚める少し前に目覚めていた。
玲央「…っ!」
瑠香「あらぁ~ん、ようやくお目覚め?ぼうや♡」
目覚めて一番に瑠香の姿を視界に入れた玲央は、引きつった表情を浮かべて身を引く。
玲央「んげぇっ!アバズレ女…!」
その返しにピキッとキレた瑠香は、玲央の胸倉を掴んで持ち上げる。
瑠香「誰がアバズレだコラァァァァァ!!テメーら助けてやったの誰だと思ってやがんだ!アァ!?」
玲央「っ!」
玲央はまだ睡眠薬が身体に残っているのか、瑠香の暴挙にただただ受け身。それを傍らで見ていた紅蓮は大きくため息を吐いて深く目を瞑り、手で額を抑えながらながら瑠香へと言葉を掛けた。
紅蓮「おい瑠香、地が出てるぞ。」
その言葉で瑠香は我に返り、ハッとなって掴んでいた手を離す。そして左手を頬にあてて目をパチパチさせた。
瑠香「あら、いっけなァい♡」
玲央「・・・・・。」
突然離された玲央は床に落とされる形に。だがこれ以上何か言えばまた自らの首を絞める事になり兼ねない。まだ本調子ではない今、玲央は大人しくしておく事が得策と考えた。
二人のやりとりが収まった頃合いで、紗羅が瑠香の服をくいくいっと引いて彼女の顔を見上げる。
紗羅「瑠香、助けに来てくれて、有難う。玲央の分までお礼、言うね。」
ウサギの人形をぎゅっと抱きかかえたまま上目遣いで放たれる謝礼の言葉。見た目十二歳ぐらいの少女のそれは何とも可愛らしく。瑠香はキュンとなって紗羅を抱き締めた。
瑠香「あぁん♡やっぱり紗羅は可愛いわァ♡いいのよん♡気にしないでぇ♡♡♡」
紗羅「瑠香、苦しい。」