第104章 第百四訓 「真剣勝負にドーピングは邪道。」
- 葵咲サイド -
松本「葵咲さん!大丈夫ですか!?」
葵咲「…っ。大丈夫、です。少し立ち眩みはしましたが、それ以外は…。」
少し下を向いた後、葵咲は顔を上げて松本に視線を合わせる。見たところ、緒方のような変貌を遂げる様子もなく、至って普通。変わりない。
松本はまず、緒方に刺された脚を診る。そしてその後は葵咲の頬へと手を添え、目を覗き込んだり、首元に触れて脈を診たり。確かに特に異常はないようだ。
その様子を見た土方と桂は怪訝な顔を浮かべる。投薬を間違えたのだろうか。二人は緒方の方へと視線を移すも、緒方は今になって土方達の攻撃が効いてきたのか、吐血して失神してしまう。
緒方「…っ。ガハッ。」
緒方から話を聞き出せなかった為、葵咲に投与された薬の詳細は分からない。間違いなのか、後になって症状が表れてくるのか…。
ここで土方達が考えていても答えは出ない。土方は桂に目を向けるも、桂は首を横に振った。松本に任せよう、無言でそう言っているようだ。土方も頷き、二人は倒れた緒方へと視線を落とした。
一方、松本は緒方には目もくれずに葵咲の顔を覗き込みながら問診していた。
松本「何か違和感などはありますか?」
葵咲「いえ、特に何も…。注射器が刺さったところがチクチクするぐらいで。さっきの立ち眩みも治まりましたし…。」
松本「そうですか。」
葵咲の話を聞き、再び顔色や脈を診る松本。だがやはりこれといった異常はなく、松本は葵咲を離して頷いた。
松本「…そうですね、今見た限りでは大丈夫そうですが…薬の効果はすぐに表れるとは限りません。帰ったらまず検査を。」
葵咲「はい。」