第104章 第百四訓 「真剣勝負にドーピングは邪道。」
- 葵咲サイド -
緒方と交戦中の葵咲達。数々の攻撃を仕掛けるも、緒方の鋼の肌には未だ傷一つ付けられてはいなかった。そんな劣勢を強いられている戦闘の最中、強烈な轟き音が響いた。
ドォォォン!!
「!?」
ズズズッと地響きが鳴り、地面が揺れる。予想だにしていなかった事態に、この場にいる誰もが目を見開いて動きを止めた。
土方「!?」
桂「なんだ!?」
揺れが収まってすぐのこと、緒方に異変が表れた。硬化した巨大な身体の皮膚がボロボロと剥がれ落ち始めたのである。
緒方「なっ!?」
葵咲「これは…!?」
肌が落ちていくのと同時に、脅威であった左手のかぎ爪もゴトッと落ちた。そんな劣化してゆく緒方を見て、松本が何かに気付いたように瞳を大きくした。
(松本:塔の破壊が上手くいったのか…!)
地響きが鳴る数分前、新八達が塔の破壊に成功したのだ。全力でアクセルを踏んだ長谷川は、タクシーが塔へとぶつかる直前に運転席から転がり出た。車体はぶつかったと同時に爆発し、大炎上を起こす。塔が破壊された事で、薬を投与した緒方にも歪が生じたのだろう。
詳しい事情は調査しなければ分からないが、緒方の戦力が落ちた事は明白。状況が把握出来ていない葵咲達に、松本が呼び掛けた。
松本「皆さん!彼の力が弱まっている今がチャンスです!!」
「!!」
その声を聞いた葵咲達は我に返って身構える。すぐさま攻撃を仕掛けようとするが、松本の言葉を聞いていたのは緒方も同じ。三人が斬りかかるよりも先に、緒方が残っていた右手で攻撃を仕掛けて来た。
緒方「ぐっ、ナメるなァァァァァ!!」
だがそんな緒方の攻撃を葵咲が受け止めて動きを封じる。それを見た土方と桂はすかさず攻撃を繰り出した。
土方・桂「うぉぉォォォォォ!!」
二人の斬撃は緒方へと届き、その大きな巨体を切り裂くのに成功した。
緒方「ぐわァァァッ!!」
緒方はその場に倒れ込むと同時に、変貌を遂げた巨体から切り離されて元の人間の緒方に戻った。異形の身体は粉々に砕け散って砂と化す。
桂「己の領域を超えた力は、いずれ歪が訪れ、肉体の破壊へと繋がる。」
土方「自分に見合った力しか手に入れる事ァ出来ねぇんだよ。それを超えたきゃ鍛錬を積め。出来ねぇなら最初から手ェ出すなって事だ。」