第104章 第百四訓 「真剣勝負にドーピングは邪道。」
殴り飛ばされた玲央は地に腰を付け、口元から流れ出た血を手で拭いながら目の前に立ちはだかる二人を見上げた。
銀時も近藤も、既に正気を取り戻している。いや、初めから効いてなどいない。
何故なら、二人とも常に己の欲に忠実だから。
妙の迷惑等考えずに家に上がり込んでまでストーカー行為を働いたり、お登勢の叱責無視して家賃を滞納したり。いずれも我が身優先の精神でなければ、なかなか出来ないだろう。銀時は普段通りの表情で玲央を見下ろした。
銀時「殺人欲?排除欲?俺達ゃ、んなくだらねぇモン持ち合わせちゃいねーよ。」
近藤「確かに人間の欲望は無限大と言われちゃいるがな。俺達にあるのは愛しいモノを欲する欲求だけだ。」
銀時「俺達侍は人が斬りたくて刀振るってるわけじゃねぇ。大事なモン護る為に命張って刀振ってんだ。侍について、そのへんもう一回勉強し直して来い。」
地球の侍について勉強不足を指摘する銀時。思うようにいかない事に、玲央は苛々を募らせた。そして再び立ち上がって二人を睨みつける。
玲央「チィッ!くだらねぇ。んなもん興味ねーんだよ。もういい、俺の力でねじ伏せてやらァ!」
その言葉に、銀時と近藤は刀や木刀を手にして構える。術攻撃が効かないからといって、玲央の攻撃が弱くなったわけではない。銀時達が劣勢である事に変わりはないのだ。先程のスピードや力に対応する為にも、瞬きすら許されない状況。ここは先手必勝か。そう考えた銀時は先に動き出そうとする。
だがその時…。
ドクン!
玲央は突然目を見開き、その動きをピタリと止めた。
玲央「…!?」
動き出そうとしていた銀時だったが、玲央が急に動きを止めた事で銀時もその動きを止める。
様子がおかしい。
今無謀に攻撃を仕掛けるのは得策とは言えないだろう。玲央の異変には近藤も気付いており、二人は玲央の様子を窺う事にした。
銀時「?」
近藤「な、なんだ?」