第103章 世界は広い。
その姿はさながら、RPGのラスボス最終形態の如しだ。巨大化した身体は、手の生えた大蛇、いや、オオトカゲのような形態。そのオオトカゲの首元に緒方の身体が埋め込まれているような、そんな化物形態である。
先程斬られた左手も元通りのようだ。左右に生えた手には大きなかぎ爪を有していた。かぎ爪のような手は玲央のそれと同種のもの。
一瞬で変貌を遂げた緒方を見上げ、葵咲は思わず叫び声を上げる。
葵咲「えぇぇぇ!?化物ォォォォォ!!」
そんな葵咲の叫び声には構わず、状況を見た桂は瞬時に冷静に判断を下した。
桂「葵咲、お前は右手の攻撃が来たら、それを防いでくれ!」
葵咲「! 分かった!」
そう言うと同時に、桂は右手人差し指と中指を立てて印のような構えを結ぶ。そして顔の前で念じてカッと目を見開いた。
桂「奴め、頭部、右手、左手とそれぞれにHPがあるようだな。特に左手には気を付けろ。HP回復の術を携えている。それをまず落とした方が良い。土方、俺とお前でまず左手を叩くぞ!」
土方「ボス戦かァァァァァ!!つーか何でお前がライブラみてーな術使えるようになってんだよ!」
桂「ライブラじゃない、そこのデスクにあった資料だ。」
土方「じゃあさっきの印みてーなの丸々いらねーだろうが!紛らわしい真似してんじゃねェェェェェ!!」
ボス戦によくあるやつだ。常套法として回復薬を担う敵から倒す。それには納得だが、ただ資料による情報収集を行なっただけであれば、格好を付けて印のようなものを結ぶ必要はない。その事をすかさず土方はツッコんだ。桂はただこの場のRPGのような臨場感を楽しんでいるだけのようだった。
ひとまず桂の提案どおり、男二人で左手から落とす為に攻撃を仕掛ける。葵咲は二人が攻撃に専念出来るよう、右手の攻撃を払い除けて二人を庇うように戦った。だが土方が勢いよく左手に斬りかかるも、硬化された肌に刀攻撃をはじかれてしまう。
土方「チィッ!攻撃が効かねぇ!!」
葵咲「けど、必ずどこかに弱点はあるはず!」
桂「俺達でそれを探しながら闘わなければならんという事か…!なかなか骨が折れそうだ。」