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銀魂 - 雪月花 -

第103章 世界は広い。


だがまぁ無理もない話。緒方は松本が華月楼で働く事になった経緯や、薬を発案した意向を知らない。鐡の元で薬を研究していた彼を自分と同種の人間だと認識してしまってもおかしくはなかった。
松本は頭を振りながら緒方へと言葉を返す。


松本「確かに、私も新薬の研究をしていました。ですがそれは、人を生かす為の薬です。少しでも長く生きられるようにと願いを込めた薬。人々の心と生活を豊かにする為の薬の発案を試みていたんです。貴方は、医者の中でも群を抜いて素晴らしい功績を残している方。そんな貴方が何故、このような人外な力を手に入れようとしているのですか?これは自然の摂理に反する行為です。」


真っ直ぐに向けられるその瞳には熱い想いが宿っている。だが、そんな想いは緒方には届いていない。緒方は小首を傾げながら怪訝な顔を浮かべた。


緒方「おかしな事を言うね。何がいけないのかな?」

松本「なっ!」


全く話が通じていない。その事に松本が言葉を失っていると、何食わぬ顔で緒方は自らの持論を唱え始めた。


緒方「君の発案した薬、忘却薬だったかな?それだって自然の摂理に反しているんじゃないかな?そもそも、現在の医学がそうだ。病気に抗う薬を作っている時点で反していると僕は思うけどね。神の思し召すままに生きろと言うのなら、治療も神の決定に背く行為。病に掛かったら、それを運命と受け止め、死を受け入れなければならない。違うかな?」

松本「それは…。」


屁理屈、揚げ足取り、そういった言葉が相応しいように思われる緒方の言葉ではあるが、全く否定出来るものでもない。正解と言える反論の言葉が見付からず、松本は口を噤んでしまう。

だがここで、二人がそんな会話を繰り広げている間に緒方に少しの隙が生まれていた。その隙を土方と桂は見逃さず、瞬時に動いて緒方の間合いに入る。桂が刀で注射器を握る緒方の左手を斬り、その隙に土方が葵咲を奪還した。


緒方「ぐあぁっ!!」
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