第103章 世界は広い。
- 松本サイド -
電話を切った松本も、すぐさま動き出そうとしていた。
(松本:私も土方さん達(かれら)の元へ…。)
一刻も早く追い付かなければ。そう思った松本はスッと立ち上がって走り出そうとする。だが異形種が一匹、そんな彼の背後を取った。
松本「!?」
電話に気を取られていて気付くのに遅れた。もとより武闘派ではない松本だ。そういった類の反応は鋭くない。一瞬で血の気が引く松本。これはもう覚悟を決めるしかない。
異形種が自分へと仕掛けてくる攻撃がスローモーションに見える。こういう場面では全てが遅く見えて走馬灯が過るとされているが、本当だったのか。そんな事を考ながら松本はきゅっと目を瞑る。
だが異形種の攻撃が自分に当たる事はなく、その異形種が蹴飛ばされる鈍い音が響いた。
松本「っ!…!?・・・・神楽さん!」
恐る恐る目を開けると、松本の前には仁王立ちの神楽が。どうやら松本が異形種に襲われそうになっている事に気付き、駆け付けてくれたようだ。めまぐるしく展開する目の前の出来事に、松本の思考は置いてけぼりだ。そんな松本に神楽が活を入れる。
神楽「何やってるアルか!早く行くネ!!」
松本「すみません!有難うございます!」
その怒号にハッとさせられた松本は我に返り、慌てて駆け出した。松本がこの場から離れた事を確認し、安堵の微笑を漏らす神楽。
だがその安心も束の間。無数の異形種達が神楽へと襲い掛かって来た。反応が一歩遅れ、神楽はその攻撃を受けてしまう。なんとか両腕でのガードは間に合ったものの、神楽は突き飛ばされて壁に背を打ち付けた。
神楽「がっ…!!」
信女「!」
神楽が攻撃を受けた事で、信女もそちらに気を取られてしまう。神楽のフォローに回ろうと動こうとするが、紗羅がそれを許さなかった。
紗羅「よそ見してる場合?」
この場にいる異形種達を一斉に信女へ攻撃させる。流石の信女も全ての攻撃をかわす事は出来ず、肩に傷を負った。
信女「っ!!」