第103章 世界は広い。
- 土方サイド -
行く手を阻もうとする紗羅に対峙するのは女二人、神楽と信女だ。土方と桂の脇から一歩前へ出る神楽達に、土方は目を見開いた。
土方「お前ら…!」
その呟きに、神楽は紗羅から目を離さず前を向いたまま答える。その表情は至って真剣なものだ。
神楽「緒方(あいつ)、ヤバそうな匂いがしてたネ。早く行くアル。」
信女「ここは二人もいれば十分。」
どうやら少し対峙しただけで神楽達も緒方が異端者である事を肌で感じ取ったらしい。神楽の言葉を受けて、土方達は頷いて駆け出した。
土方「悪ィ。」
桂「葵咲の事は俺達に任せろ!」
二人が紗羅の横を通り抜けようとすると、紗羅はすかさず二人に対して攻撃を繰り出そうと構える。
紗羅「させない…!」
だが紗羅が動くよりも先に、信女が紗羅の間合いに入って斬り掛かった。紗羅は攻撃を避ける為、後ろに下がる。
紗羅「っ!」
信女「それはこっちの台詞よ。逃げる事は許さない。」
神楽「折角女だけで募る話もあると思って設けた場ヨ。女三人水入らず、女子会トーク楽しむネ。」
戦闘力が極めて高い神楽と信女(ふたり)。その事については紗羅も感じ取っている様子だ。紗羅は抱えていたぬいぐるみからフルートを取り出す。そしてぬいぐるみを背負い、フルートを構えて臨戦態勢に入った。
紗羅「貴女達と遊んでる暇、ないの。」
ピーッ!紗羅が一音出すと同時に小部屋から異形種達が出て来た。
神楽・信女「!?」
信女「気を付けて。彼ら、天狗村の人間よ。」
神楽「!」
先程、葵咲が捕まった時と同じ状況。異形種達は紗羅を庇うように囲み、神楽達と対峙する。