第102章 天才の頭のネジが外れればサイコパス。
思わず安堵の声が口から洩れた。葵咲が涙目でドアの方へと顔を向けると、そこには緒方追跡チームの五人が立っていた。葵咲の視線につられて緒方もそちらへと目を向ける。
緒方「騒々しいな。ドアぐらい静かに開けられないのかな?」
緒方は眼鏡をクイッと上げながら、ひとまず葵咲の上から起き上がる。そしてベッドから降りて土方の方へと身体を向けた。
土方はドア付近に立ったまま、緒方の様子を伺っている。そして緒方から視線を離さぬまま、刃先を緒方へと向けた。
土方「葵咲を開放しろ。」
緒方「駄目駄目。彼女はもう僕のモノ。生かすも殺すも僕次第。」
土方「てめぇ…!!」
あっけらかんと語る緒方。その様子に土方は神経を逆撫でされた。土方だけではない。その場にいる誰もが怒りのまま緒方を睨んでいると、緒方はうんざりしたような顔を浮かべる。
緒方「僕の研究、こんなところで邪魔されたくないなぁ。ここはお願いして良いかな?」
紗羅「御意。」
そう言うと同時に奥から紗羅が現れ、緒方をその背に庇った。緒方はすぐさま葵咲の足枷を外し、再び彼女を抱えて更に奥の部屋へと進もうとする。
葵咲「ちょ…っ!降ろして!!…土方さんっ!!」
緒方の腕の中で藻掻くも開放してはもらえない。まだ薬の効果が残っているのか、上手く力が入らない。葵咲は必死に土方へと助けを乞うが、緒方はそのまま進んでいく。土方はその背を目で追いながら叫んだ。
土方「待ちやがれ!!」
土方達が緒方を追おうとするが、その前に紗羅が立ちはだかった。
紗羅「行かせない。」
土方「チッ。」
こいつに構っている暇はないのに。そう思いながらも、ここは応戦せざるを得ない。土方が刀を構えようとしたその時、背後からバンバン!という銃声のような音が響く。
土方「!」
神楽の傘攻撃だ。銃弾は紗羅の足元へと打ち込まれ、紗羅は後ろに飛び退いた。思わず振り返る土方。そこには頼もし気な顔をした神楽と信女が戦闘モードに入っていた。
神楽「お前らは先に行くとイイネ。」
信女「貴女の相手は私達よ。」