第101章 大切なモノは己の手で護り抜け。
佐々木「天狗村で我々は見た事のない凶暴な生物に出くわしました。犬と蠍が一体化したような化物です。毒は蠍が持つものより遥かに強力。樹の幹を溶かす程の物でした。そしてその場に現れたのが、緒方です。我々は身を隠して様子を見ていましたが、緒方はそういった化物の痕跡を見たり、サンプルを採取してこちらに向かったのです。」
桂「なるほど。人払いした天狗村で生物実験を行なっていたというわけか。」
佐々木の説明を聞いて唸りながら頷く桂。そんな桂を横目に、信女が更なる報告を付け加える。
信女「緒方だけじゃない。海賊の少女もいた。」
土方「鐡か。」
信女「少女の姿をしていたけど、彼女、きっと相当な手練れ。油断出来ない。」
信女の報告は素直に受け入れる事が出来た。以前対峙した華音という男も少年のナリをしていたが、相当な手練れだった。
この場で華音と直に接したのは土方だけ。松本が華音と遭遇した事があるのかは不明だが、仮に遭遇していたとしても侍でない松本では戦闘力は測りきれないだろう。
海賊の少女の件はひとまず置いておき、土方はもう一人の重要人物、緒方について詳しい情報を把握する為に松本に質問を投げ掛けた。
土方「緒方って男は昔からヤベェ男だったのか?」
松本「緒方滞庵は、表向きにはとても良い医者でした。」
桂「表向きには?含みのある言い回しだな。」
松本「・・・・・。」
桂からの指摘に、松本は眉根を寄せて視線を下に落とした。