第101章 大切なモノは己の手で護り抜け。
見た事のない異形種に囲まれる葵咲と信女。
更なる緊張感を走らせて構えていると、紗羅と呼ばれた少女が首を横に振りながら反論の意を示す。
紗羅「とっても失礼。彼らは人間。紛れもない、うちの、社員。」
葵咲「!?…まさか!」
“人間”、“人体実験”、“いなくなった天狗村の人達”…。葵咲の中でこれらのワードが結び付いた。信女は気付いていない様子で、襲い来る異形種達に刀を振るおうとしている。
葵咲は慌てて信女を止めた。
葵咲「信女さん、待って!斬っちゃダメ!!もしかしたらこの怪物達、天狗村の人達かもしれない!!」
信女「!」
葵咲の言葉で攻撃の手を止める信女。すんでのところで相手からの攻撃を交わして飛び退いた。二人のその様子を見て、緒方は拍手をしながらクククと笑う。
緒方「ご名答。流石はあのお方の血筋だ。是非ともその血統を…僕に・・・・!君が僕のモノになれば…また一歩、あの方に近付ける…!」
葵咲「あの方?」
緒方「住民を傷付けたくはないでしょう?さぁ、こちらに。」
葵咲「・・・・・。」
仕方なく葵咲は刀を納め、両手を上げて緒方への方へと歩み寄る。
そして葵咲が緒方の目の前に立ったと同時に、緒方は懐からスプレー缶を取り出し、葵咲の顔に向かって噴射した。
葵咲「!!」
催涙スプレーか何かか、葵咲は意識を失ってクラリと倒れる。地に倒れ込む前に緒方がそれを支えた。
緒方は葵咲を抱き上げ、お姫様抱っこしてその場を立ち去ろうとする。
信女「待ちなさい!」
信女の制止に首だけ振り返る緒方。一方信女は異形種達からの攻撃を交わしながらの為、緒方に近付けないでいる。緒方は不敵な笑みを浮かべながら言葉を返した。
緒方「待てと言われて待つ程、真面目な性格じゃないもので。彼女は僕が貰います。そちらはいらないので。お任せして良いかな?」
紗羅「御意。」
その場を任された紗羅が緒方を背に庇い、戦闘態勢に入る。緒方はその場を立ち去った。