第101章 大切なモノは己の手で護り抜け。
- 葵咲サイド -
小窓から工場内へと侵入した葵咲と信女。入った先は予想通り事務室だった。事務デスクが二つ向かい合わせで並べられ、壁際にはキャビネットがある。表向きは普通の工場。売上管理等ここで行なっているのだろう。裏帳簿等がある可能性は高いが、今は人命優先。人体実験が行われているかもしれない工場だ。そちらの調査を最優先すべきだろう。
二人は簡単に事務室内の写真だけを押さえ、部屋から出た。
慎重に、物音を立てないように。二人は忍び足で場内の廊下を進む。行く先に警備員等はいないか、様子を伺いながら進んでいると背後で声が上がった。
「侵入者。」
葵咲・信女「!?」
気を付けて進んでいたつもりだが、早々に見付かってしまった。背後の気配に気付かなかった。相手は相当な手練れか。二人は慌てて振り返る。
そこには薄いピンク色の髪をツインテールにした少女が。うさぎのぬいぐるみを抱えて立っていた。服装は勿論・・・・
葵咲「あの服装…!宇宙海賊、鐡!?」
こちらも華音と全く同じではないが、系統は類似したもの。白色ベースの服装だ。
少女であるが故か、短めのスカートを穿いている。少女は葵咲の発言に少し目を大きくする。
「誰?私達の事を、知ってる人。」
葵咲「貴女達の事は華音って子から聞いてる。大人しくこの星から手を引きなさい!」
葵咲は発言と同時に抜刀し、少女へと刃先を向けた。それと同時に信女も刀を抜く。二人が戦闘モードに入ろうとすると、またもや二人の背後で声が上がる。
「おやおや、威勢の良い事で。」
葵咲・信女「!?」
葵咲達は挟まれた形になった。二人は少女に気を払いつつも、背後の人物へと視線を向ける。
葵咲「貴方は…!!緒方さん!?」
そこに立っていたのは、茶屋前で遭遇した男。“緒方先生”、そう呼ばれていた人物だ。葵咲の反応に、緒方は至極嬉しそうな笑みを浮かべる。
緒方「僕の事、覚えててくれてるなんて光栄だなぁ。吉田葵咲さん?市村葵咲さん?どちらで呼ばれる方がお好みかな?」
葵咲「なっ!?何で知って…っ!」
緒方「ククク。」