第101章 大切なモノは己の手で護り抜け。
言葉を掛けられ、腕組みしながら振り返る桂。声を掛けたものの、土方はその言葉を言い淀む。桂は片眉を上げて怪訝な顔を浮かべた。
そして少しの間を置いてから土方はゆっくりと言葉を押し出した。
土方「今回の墓参りの件、葵咲を連れ出した件については不問に…いや。礼を言っておく。」
桂「!」
そんな機転を利かせる事は出来なかった。自分には到底出来なかった。そう自分の力不足を感じている土方。土方は少し寂しそうな表情を浮かべて俯く。
そんな土方を見た桂は少し沈黙を落とした後、目を瞑って視線を逸らしながら言葉を紡いだ。
桂「貴様に礼を言われる謂れはない。俺の師でもある。…だが、次はお前が付き添ってやれ。」
土方「!」
その言葉にパッと顔を上げる土方。そんな土方の顔は見ずに桂は続ける。
桂「葵咲がこれからどんな道を歩もうと、松陽先生が葵咲の伯父である事は未来永劫変わらん。俺ではいずれ力不足になる日が来よう。」
土方「お前…。」
桂は目を開き、再び土方へと目を向ける。そして温かな微笑を浮かべながら土方へと言葉を託した。
桂「葵咲の事、頼んだぞ。」
土方「…ああ。」
そんな熱き友情にも近い空気の流れるその場を、別の気配が遮った。
桂「!」
この場に近付く人の気配を感じ、桂は人差し指を立てて口元に沿える。その気配には土方も気付いており、二人は静かに茂みへと身を隠した。