第101章 大切なモノは己の手で護り抜け。
まさか宿敵である桂にそんな事を言われようとは。
土方は返す言葉を失う。だが土方の瞳は死んではいなかった。むしろ桂の瞳から火種を受け取り、その瞳に強き炎を宿す。
そんな土方の決意の眼差しを受け、桂はフッと微笑を零した。
桂「無論、葵咲の身に危険が及ぶようであれば、俺も惜しみなく力を貸そう。」
土方「桂…。」
その言葉を聞いて、土方は昨日一日の葵咲達の行動を思い返す。桂も心底葵咲の事を気に掛けている、大切に想っている。今の言葉で更にそれが強い想いなのだと伝わって来た。
土方も桂につられてフッと笑みを漏らす。そして桂には届かぬ程の小さな声でボソリと呟いた。
土方「…『大事なら常に自分の目の届く範囲に置いとくのが定石』、か。」
桂「? 何か言ったか?」
土方「いや、何でもねぇ。」
単なる独り言。桂に伝えるつもりはない言葉。土方は頭を振って懐から取り出した煙草に火を点けた。いつもと変わらぬ土方の姿を見て、桂はその表情を不敵な笑みへと変える。そして土方を見下げるように顎を上げて言葉を紡いだ。
桂「もしお前が尻尾を巻いて逃げるというのであれば、俺が葵咲を貰うぞ。」
土方「! けっ。んな事 誰がするかよ。」
桂「フッ。」
そこにあったのは自信に満ちた土方の顔。決して誰にも葵咲を奪わせまいという決意に満ちた顔だ。その表情を見た桂は安心したような表情を浮かべ、土方に背を向けて歩き出そうとする。そんな桂の背に土方は語り掛けた。
土方「それから もう一つ、テメーに言っておきてぇ事がある。」
桂「なんだ?」