第101章 大切なモノは己の手で護り抜け。
桂「その腕、鈍ってはいないようだな。」
土方「あ?」
勝者は土方。にも関わらず、何故か上から目線に評価された事に苛立った。土方が眉根を寄せて睨んでいると、桂は袖に腕を通して腕組みしながら静かに言葉を放った。
桂「先程の質問に答えよう。結論から言えば、俺は高杉と葵咲が幼馴染である以上の事は何も知らん。」
土方「なっ!だったら何だったんだよ、今の戦闘はァァァ!!無駄な体力使っちまったじゃねーか!!」
てっきり何か知っているのだと思っていた。知っているが言えない、それ故に決闘を申し出たのだと。だが違っていた。何の為の戦闘だったのか、意味が分からない。むしろ今は鐡との一戦を控えているかもしれないこの状況、体力を温存しておきたいところだ。苛々が募る。
そんな土方には構わず、桂は真剣な眼差しで土方を見据えた。
桂「だから何だと言うんだ?」
土方「あぁ!?」
桂「高杉にとって、葵咲が松陽先生の姪という特別な存在だろうが、それ以外に過去二人に何があろうが関係あるまい。それでお前の今の気持ちや今後の態度が変わるのか?お前の葵咲に対する気持ちは、その程度のものなのか?」
土方「!」
桂からの指摘に土方は目を丸くする。土方が口を噤んでいると、桂が静かに続けた。
桂「まぁお前の懸念は分からんでもない。だが私情や過去がどうであれ、高杉が葵咲を手中に収めようとしている事は明白。警戒が必要な事に変わりはない。」
そう言って桂は一度目を瞑る。そして再び目を開き、大きく息を吸い込んで再び土方へと熱き魂の宿る瞳を向けた。
桂「侍なら…いや、男なら、お前のその手で護り抜け。高杉(やつ)がどうとか関係なかろう。大事なのは、貴様がどうしたいかだ。」
土方「!!」