第100章 頼りになるのは全集中の呼吸。
- 土方サイド -
突如その場を駆け出した葵咲に気を取られ、背後の気配に気付くのに遅れてしまった土方。刀を抜こうとするも、相手との距離が近すぎる。刀を抜いたところで攻撃を受ける事は必須。
(土方:マズイ!!間に合わねぇ…っ!)
土方はその瞬間の応戦を諦め、後ろに飛びのく事を選択する。だがそれも後手。致命傷を避ける事は出来たとしても、傷を負う事は避けられないだろう。絶体絶命のピンチか、そう思ったその時…!
―― ザシュッ!!
切れの良い惨殺音と共に、異形種の動きが止まる。そして異形種はその場に倒れ込んだ。
土方「!?」
倒れた異形種の背後に目をやると、そこにいたのは・・・・
土方「桂…!!」
桂「この程度の奴に背中を取られるとは。鬼の副長ともあろう男が、情けない話だな。」
異形種を斬り、土方を助けたのは行方をくらませていた桂だった。土方はその行為に目を見開く。討幕を目論む桂にとっては、土方がそのままこの異形種に攻撃された方が好都合だったのではないだろうか。
土方は見開いた瞳を普段通りの切れ長の目に戻し、桂を見据えた。
土方「…何故俺を助けた。」
解せない行動をストレートに尋ねる土方。桂は刀を鞘へとしまいながら深く目を瞑る。
桂「大体の事情は把握している。目的は俺も同じだ。ここを調べ、敵であるならば殲滅する。その事は江戸の平和にも繋がるというもの。何よりこの地を汚す輩が許せん。敵の総戦力が見えぬ現状では、こちら側も戦力は多いに越した事はない。違うか?」
訳を聞いて納得する。確かに桂一人ではこの工場を調べるのは難しかろう。しかも相手は一筋縄ではいかなさそうな宇宙海賊。ここは結託する方が得策か。桂の行動に納得の姿勢を示した土方は、懐から煙草を取り出して火を点ける。
土方「…いいだろう。俺も今はお前の事を見逃してやる。」