第100章 頼りになるのは全集中の呼吸。
紅蓮「待て。この程度なら俺の一太刀で十分だろう。お前の“能力(チカラ)”や貴重な薬を使う必要はない。」
近藤「一太刀だと?えらくナメられたもんだな。」
いくらこちらが疲弊しているとはいえ、一太刀は酷い言われようだ。近藤が眉をピクリと動かすも、相手はそれを訂正するつもりはないらしい。
紅蓮は銀時達三人に鋭い視線を送った後、背中に携えた大剣の柄に手を掛けた。そして次の瞬間、銀時達目掛けてその場で大きく振りかざす。
―― ビュオッ…!!
「!?」
紅蓮の一太刀は突風を巻き起こした。三人は身構えるのが遅れ、その風に煽られる。
「うわァァァァァ!!」
三人は風に吹き飛ばされ、屋上から落とされる羽目になった。
まさかここまであっけなく戦闘が終了するとは思っていなかった釣り目の少年は、目を瞬かせて屋上の端まで歩み寄る。そしてしゃがみながら三人が落ちた先へと視線を落とした。
「なんだァ?あっけねーっ。さっきの威勢は口だけかよ。ま、相手が紅蓮じゃ無理ねぇか。」
そう言って少年は紅蓮へとニヤリと笑みを向ける。紅蓮は得意げになる事もなく、平然とした表情で少年に視線を合わせる。そして銀時達の存在はなかったかのように話を続けた。
紅蓮「それより玲央(レオ)、あまり薬は多用するな。“あいつ”が戻る前に計画が漏れたら困る。」
玲央「わーってるよ。」
釣り目の少年は“玲央”と呼ばれた。どうやらそれが彼の名前らしい。玲央は紅蓮の事は認めているようだ。
だが折角紅蓮を評価したにも関わらず、紅蓮からは玲央に対しては苦言を呈される、その事に玲央は不満の様子だ。少しムッとしながら視線を反らして短く返事を返す。その話を早々に切り上げようとしたらしい。
だが紅蓮の小言は続いた。