第99章 主役のチームはいつの時代も横並び。
一方、そんな葵咲には気付いていない様子の土方。その場を闊歩する異形の生物に釘付けだ。
土方「なんだあの化物…!!天人か?いや、違うか…。なんだ…?」
暗くてはっきりとは見えない。だがズシンズシンと歩く異形の生物は、象ぐらいの大きさ。明らかに人間ではない。だが天人というには知性のなさそうな行動。土方は葵咲を抱きすくめたまま、その異形種を凝視していた。
土方の腕の中にいる葵咲は、異形の生物など視界に入ってはいない。口元を両手で覆いながら目を大きくぐるぐるさせて、破裂しそうな心臓と戦っている。
(葵咲:何これ何これ何これ!何なのコレェェェェェ!!あの時みたいな…!手錠の時と同じ感覚がァァァァァ…っ!!)
“手錠の時”とは葵咲と土方とが不慮の事故で手錠に繋がれて一夜を過ごした一件。雪月花第52章参照である。
あの時葵咲は土方を意識してしまい、一睡も出来なかった。その時の感覚が再び訪れたのである。それだけではない。それを意識し始めた葵咲は、華月楼で華音の術を食らった時の事も思い出す。あの時は夢の世界で土方と一線を越えそうになった。葵咲の頭の中は小パニック状態だ。
少しの時間、土方が静かに様子を伺っていると、異形の生物は何処かへ立ち去ったようだ。その事を確認した土方は葵咲の身体を抑えていた手の力を緩め、繁みからひょっこり顔を出す。
土方「行ったか?とりあえず、奴の後を尾行(つ)けて…。」
そこまで言ったところで、葵咲の心臓が限界に達した。葵咲は緩まった土方の手の中から抜け出して、その場から無言で駆け出す。
土方「あ!ちょ!オイ!!葵咲ァァァァァ!!」
突如逃げ出す葵咲。黙って駆け行くその意図が分からない。土方が走り去る葵咲の方へと手を伸ばして引き留めようとするも、葵咲は聞かずに猛ダッシュ。
土方「待て!勝手に動くと危ね…っ」
葵咲の行動に気を取られて、背後の気配に気付くのが遅れた。土方の背後に、先程とは別の巨大な異形種が現れ、土方へと襲い掛かった。
土方「・・・・!?」