第99章 主役のチームはいつの時代も横並び。
土方が下になりながら真っ逆さまに落ちゆく二人。その身は落ち葉の山の上へと着地した。
葵咲「…っ。」
ふわふわした沢山の落ち葉がクッションになり、大きな外傷なく軽症ですむ二人。土方が軽く背中を打つ程度ですんだ。木の枝をすり抜けて落ちた事も大きかったのかもしれない。枝葉で勢いが殺された事で、落下速度が減速した事も軽症ですんだ理由の一つだ。
だが落ちた衝撃により土方は少しの間、気を失ってしまう。土方は葵咲を護ろうとして落下した為、葵咲の身体をぎゅっと強く抱きしめたまま気を失っていた。
葵咲「あ、あの、土方さん…っ!?」
小声で話し掛けるも土方は無反応。なおも強く抱きしめられる事に、葵咲は土方の腕の中で顔を真っ赤にした。
だが数分もしないうちに土方は目を覚ます。
土方「ててて…。おい葵咲、大丈夫か?」
気が付いた土方は、ゆっくりと上体を起こしながら腕の中にいた葵咲へと言葉を掛ける。葵咲はようやく土方の抱擁から解放されたわけだが、数分間の抱擁で葵咲はカチンコチンに固まっている。少しの間をおいて現実へと引き戻される葵咲。ハッと我に返って慌てて両手をブンブン振りながら答えた。
葵咲「えっ!?わっ、私は全然…!大丈夫だしっ!?何とも思ってなんかないしィィィ!!」
土方「? おい、お前ホントに大丈…」
様子がおかしい葵咲に怪訝な顔を浮かべる土方。何処かに怪我を負うも言えずに強がっているのではないだろうか、そんな心配が過る。
だがここで何かの気配に気付いた土方は、カッと目を見開いて身を小さくして木の繁みに隠れた。
土方「…! しっ!!」
葵咲「!?」
身を小さく屈める際、その咄嗟の判断から土方は再び葵咲の身体を自らの懐へと抱き寄せる。
葵咲「!!!!!」
土方の吐息が葵咲の顔に掛かる。気絶していた先程とは違い、土方の微細な動きが葵咲の心を揺さぶった。
(葵咲:ちょ!また心臓がァァァ…!張り裂けそうゥゥゥゥゥ…!!)
ドキドキドキドキ…。
高鳴る鼓動。その音が土方に聞こえているのではと思える程、激しく大きく鳴った。