第99章 主役のチームはいつの時代も横並び。
その言葉に反射的に手を止める神楽。ピタリと止めた手をすぐさま引っ込め、松本へと視線を移した。松本は神楽の横へとしゃがみ込み、化物へと視線を落とす。あらゆる方向から見定めた松本の口から次に出て来た言葉は…。
松本「…これは…犬ですか?」
新八「アンタ天然!?こんな犬見た事ねーよ!」
思ってもみない突飛な見解に思わずツッコミを入れる新八。だが松本は変わらぬ真剣な表情で、化物に視線を落としたまま続けた。
松本「私には犬とサソリが合わさった生物に見えます。」
「!」
あくまで冷静に見分する松本の意見に、納得のいくものがあった。確かに松本の言うように、よくよく見れば犬と蠍が合体したような生物に見えるのだ。佐々木が顎に手を当て、化物を眺めながら詳しい言葉に置き換える。
佐々木「確かに、ダックスフントにサソリの鋏と尾が付いたような生物ですね。」
勿論、ただ単にダックスフントと蠍とが合体した姿ではない。牙は鋭く、目もダックスのような可愛らしい円らな瞳ではない。その二つの生き物をベースとした異形の化物という言葉が似つかわしいだろう。
佐々木の言葉を聞いてか聞かないでか、話し終わると同時ぐらいのタイミングで、松本は懐からハンカチを出し、その化物を包みながら持ち上げた。
新八「あ!ちょっと!」
素手で触れていないとはいえ、不用意に持ち上げて大丈夫なものだろうか。心配した新八は松本へと声を上げる。だが松本は新八の静止を無視して化物の尾、つまりは蠍の毒針のような尾っぽを近くの樹の幹へと差した。
尾の針が刺さるや否や、幹はただれて溶け落ち、樹は瞬く間にその場に倒れ込む。松本の行為をぼーっと眺めていた他のメンバーだったが、樹が溶けると同時に倒れる事を予期し、下敷きになる事を横っ飛びで避けた。
新八「と、溶けたァァァァァ!?」
松本「やはりこの尾には毒があるようですね。」
新八「いや、毒のレベル越えてるよ!!」
冷静に ただれた箇所を見ながら言葉を漏らす松本に、こちらもまた冷静にツッコミを入れる新八。だがそんな新八のツッコミには構わず、松本は佐々木へと視線を移す。
松本「そういえば佐々木さん、工場では確か…」