第98章 頭脳派と肉体派に分かれるのがチーム分けの定番。
まさかそんな配慮が成されるとは思ってもみなかった。言われた瞬間は目を見開いた葵咲だったが、穏やかな笑顔に変えて受け答えする。佐々木の意図はよく分からないが、選択肢を与えられた事に気遣いが見え、少なくともぞんざいな扱いではない事が分かった。もしかしたら先程の葵咲の気遣いの橋渡しが良い方向へと向いたのかもしれない。そんな希望を胸に、にこにこと笑顔を向けていると、佐々木は変わらぬ表情で続ける。
佐々木「本来、貴女は見廻組(こちら側)の人間でしょう。真選組にいて宜しいのですか?」
葵咲「?」
佐々木「今からでも遅くはありません。エリート集団、見廻組に入りませんか?」
葵咲「!」
まさかの引き抜き。ここでそんな提案を受けるとは想像だにしていなかった。
葵咲が驚いた表情で言葉を失っていると、佐々木は葵咲の前へと右手を差し出しながら不敵な笑みを浮かべた。
佐々木「前将軍、定々様の側近としてもお仕えしていた名門、市村家の家紋を背負う貴女なら大歓迎ですよ。」
葵咲「・・・・・。」
どう受け止めたら良いのやら。橋渡しどころか、更なる軋轢を生みそうな処遇。もとより見廻組に移るつもりはないのだが、ここでその提案を受け入れたり、考えるような素振りを見せてしまえば、真選組と見廻組との関係は悪化しそうだ。かと言って言葉選ばず無下に断っても、佐々木の機嫌を損ねて両者の関係の溝を深め兼ねない。