第98章 頭脳派と肉体派に分かれるのがチーム分けの定番。
銀時の宿泊部屋を出て隣の自室へと戻ろうとする葵咲。そんな彼女の足を、部屋から同時に出た佐々木が引き留める。
佐々木「市村さん。」
葵咲「佐々木局長。あ、先程はアドレス交換有難うございました。」
そういえばまだその礼を述べていなかった。葵咲は律儀にも深々と頭を下げる。それを見た佐々木はまんざらでもないのか、両手を振って葵咲に頭を上げるよう促す。
佐々木「いえ、これから宜しくお願いしますね。」
葵咲「こちらこそ。あ、そうだ。鉄之助君、お仕事頑張ってくれてますよ。土方さんの小姓として私の仕事もいくつか引き継いでくれているのですが、しっかりメモ取って真面目に取り組んでくれていて。」
葵咲なりの配慮。何かと睨み合っている真選組と見廻組だが、それは決して良い状態とは言えない。むしろ同じ警察関係者として手を取り合うべきではないだろうか。手を取り合う、までいかなくとも、せめていがみ合う状態を緩和させたい。そう思った葵咲は、少しでも佐々木と打ち解けられるように、その興味を引く話題を提供したのである。
葵咲は人差し指を立てて笑顔で報告する。だが佐々木は表情一つ変えずに頷いた。
佐々木「そうですか。そんな事より。」
(葵咲:そんな事…。)
一刀両断。鉄之助の話はバッサリと切り捨てられた。
葵咲の気遣いは無駄に終わる。異母兄弟とはいえ、血の繋がる実の弟にこうまで関心を示さないものなのか。葵咲は少し胸が痛くなった。だがそれ以上追及する事も出来ず、苦笑いを浮かべるしかない。そんな葵咲の表情に気付いていないのか気付かないフリをしているのか、佐々木は淡々と続けた。
佐々木「先程は人数の兼ね合いで一番隊である貴女をとりあえず工場チームに入れさせてもらいましたが、貴女が希望するなら隣村チームでも構いませんよ。」
葵咲「! いえ、探索はあまり得意ではありませんし、私は一番隊隊士です。工場チームが適任だと思います。」
佐々木「そうですか。」