第97章 スイートルームはエリートの為の部屋。
葵咲「ちなみにその緒方滞庵という人はどんな方なんですか?」
葵咲の質問は佐々木達も興味があるようだ。話の続きを促すように、その場にいた全員が松本へと目を向ける。松本は一呼吸置いてから、いつもの凛々しい表情へと戻して話を続けた。
松本「“RYO-Ⅱ(リョウツー)”というウイルスが蔓延した事件を覚えていますか?あの時、幕府が開発したワクチン“B-超5963(ブチョウゴクロウサン)”を完成に導いたのが彼です。」
葵咲「えぇっ!?それは凄い…!」
銀時「それ凄いの?ただの眉ゾンだったんだけど。」
コミック第16巻133訓の話である。歌舞伎町を襲ったウイルス、RYO-Ⅱ。感染した者は金にがめつく強欲、賭博やパチンコをしたり、床屋で角刈りをするなど、駄目なおっさんになってしまうという驚異のウイルスだ。それを治すワクチン開発に携わっていたというのだから素晴らしい功績である事に間違いはない。だがウイルスがあのウイルスであっただけに、銀時は死んだ魚のような目のまま感動・尊敬の眼差しは向けなかった。
だがワクチン開発を担った人物。それは今回の薬品開発と通ずるものがある。佐々木は松本へと目を向けたまま質問を加えた。
佐々木「市村さんの言う緒方と風貌は一致しますか?」
松本「眼鏡を掛けていて、いつもニコニコしている印象は確かに一致します。ですが…他はどうでしょう。私が見掛けたのは何年も前の事ですから、直接見てみない事には何とも…。」
佐々木「そうですか。では緒方という男については重要参考人という事で一先ず置いておき、話を進めましょう。」
全く一致しないのであれば、確かに松本の言うとおり、記憶と憶測だけで進めるべき話ではない。少し脱線してしまった話を戻す為、佐々木は再び前を向き、今度は自らの見解を述べ始める。
佐々木「私はあの工場では人体実験のような事が行われている可能性が高いと見ています。」
「!?」
突拍子のない佐々木の見立てに、誰もが言葉を失って目を見開いた。