第97章 スイートルームはエリートの為の部屋。
葵咲は人差し指を立てて思い出した事柄を述べた。
葵咲「高評価で思い出したんだけど、緒方先生って人が物凄く信頼されてました。」
松本「!」
土方「全然関係ねー話すんなよ。話の腰が折れんだろうが。」
葵咲「最後まで話聞いてよ。」
怪しげな工場の話の真っ最中に何を言い出すんだコイツは。そう言わんばかりに苛立った表情を見せる土方。だがそれに対して葵咲もムッとしたふくれっ面を浮かべる。
確かに葵咲のその文言だけを聞けば土方の指摘は分からんではない。だが葵咲の話はまだ終わっていないのだ。
先がある事を提示して葵咲は話を続けた。
葵咲「それがちょっと不自然だったんです。子どもを探してるお母さんと話してる時に、その緒方さんとは遭遇したんですけど、息子さんが工場の方に行ったかもしれないって結論になって。確証のない段階だったんですが、その緒方さんが言うなら工場に間違いないって。子ども探しを緒方さんに任せて、そのお母さんは息子さん探しに行くのやめちゃったんです。」
佐々木「確かにそれは妙ですね。子を想う親であるなら、尚更…。」
信女「・・・・・。」
佐々木は葵咲の話を聞き流しはしなかった。遠い過去の記憶を辿るように床へと視線を落とす佐々木。その瞳は何処か寂しく、物哀しいものがある。そんな佐々木の表情を信女は黙って横目で見ていた。
そんな佐々木の微細な表情の変化に気付いていない葵咲は、そのまま話を続ける。
葵咲「それで気になったので私達も先程工場に行ってたんですが、緒方さんの姿はなくて…。」
近藤「子どもが見つからなくて別の場所探しに行ったんじゃねぇのか?」
葵咲「まぁその可能性もありますけど…。」
近藤に指摘されてその可能性も視野に入れる葵咲。葵咲達が工場へと訪れたのは桂を呼びに行った後だ。その時に少年を見付けたのだから、緒方が駆け付けた時は少年の姿がなく、入れ違いになっていたとしても何ら不思議はない。
その時感じた違和感は単なる気のせいだったのだろうかと、話がここで終了しようとしたその時、松本が葵咲へと質問を投げ掛けた。