第96章 神は乗り越えられる試練しか与えなくても、人は与えてくる。
一方、工場の敷地内を歩む葵咲達。彼女達もまた、その不気味な雰囲気に息を飲んでいた。
葵咲「なんか静かすぎない?」
桂「ああ。とてもじゃないが、活気のある土地開発を担う工場には見えんな。」
慎重に足を進める三人。不法侵入云々を除いても、誰かに出くわす事は自らの危機に直結するように感じられた。
少し歩いたところで、何かを見付けた銀時が目を細める。
銀時「…ん?おい、あれ!」
銀時の指差す方向へと目を向ける葵咲と桂。そこにはフラフラと歩く少年の姿があった。
葵咲「男の子?もしかして…!」
少年の傍へと駆け寄る葵咲。銀時達もまた、葵咲の後を追って駆け付ける。齢は十歳ぐらいだろうか。のどかな町ならではの素朴な少年だ。
葵咲は少年の肩に手を置き、少年の前に跪いて顔を覗き込んだ。
葵咲「僕、大丈夫??」
「・・・・・。」
葵咲の問い掛けに答えない。それどころか、目も合わない。ぼーっとした様子で宙を眺めている。
葵咲「? なんだか様子がおかしくない?目も虚ろだし…。」
銀時・桂「?」
少年の様子を覗き込む銀時と桂もまた、眉根を寄せた。