第96章 神は乗り越えられる試練しか与えなくても、人は与えてくる。
葵咲達は宿屋の前に停車していたタクシーへと乗り込む。折角長谷川から購入したフリーチケット、長谷川を呼んでチケット活用する事も考えたが、子どもがいなくなってから結構な時間を有している。あまり余裕はないと見て、三人は急ぎ、停車中のタクシーへと乗り込む事にしたのだ。
その様子を見届けた土方達もまた、宿屋の前に停車していたタクシーへと乗り込んだ。
そんな土方達の様子を、宿泊部屋の窓から覗き見ている影があった。
「おやおや…これは少々厄介な方達と遭遇してしまいましたね。彼らの行先が工場なら、止めて来てもらえますか?」
影は同室にいたもう一人の人物へと話し掛ける。そして指示を得た人物は静かに頷いた。