第95章 恋のキューピッドは大半が自己満足。
二人は手を繋いで紅葉寺散策。紅葉(もみじ)の紅(くれない)に、イチョウの黄。その他茶色や緑、様々な色彩に目を奪われる二人。日が傾いてきた際には、夕日の光を受けて色の変化も楽しめた。江戸には無い、のどかな景色の中に浮かび上がる綺麗な紅葉。二人は紅葉狩りを存分に楽しんだ。
ひとしきり紅葉を堪能した後、葵咲達は紅葉寺を出て土産物屋の並ぶ通りへ。そこで葵咲は何かを見付けて顔をパッと明るくした。
葵咲「あ、あそこに抹茶屋さんがある!ちょっと休憩する?名物の紅葉の天ぷらもあるみたいだし、食べてみようよ!夜になったら、『閉…』」
銀時「閉“マッチャ”うし、とか言ったらぶっ飛ばすぞ。」
葵咲「・・・・・。」
ここでもまた、思い付いたダジャレを事前抑制され、葵咲は言葉を失ってしまうのだった。
ともあれ、歩き疲れた事もあり、二人は抹茶屋に入る。
店先の番傘が飾られた赤い座席に腰掛ける二人。注文して間もなく、紅葉の天ぷらと抹茶が運ばれて来た。
葵咲「紅葉見ながらこうして抹茶飲んで、名物食べてって風情があって良いね。」
銀時「そうだな。」
葵咲「太郎ちゃんも来れば良かったのにね。」
のほほんと語らう二人。土地柄的にも綺麗な空気に二人の心は浄化されるようだった。
そしてそんな空気を大きく吸い込みながら葵咲は銀時にとびきりの笑顔を向ける。
葵咲「銀ちゃん。誘ってくれて、ありがとう。」
銀時「なっ、なんだよ、急に。」
笑顔と共に贈られる謝礼の言葉。それは今回の紅葉デートの事?そんなに嬉しかったの?そう思った銀時の心は再び躍り、自然と顔も赤くなる。