第95章 恋のキューピッドは大半が自己満足。
そして二人は手を繋いで紅葉寺に入った。
葵咲「な、なんか緊張しちゃうね。」
銀時「!!!!!」
頬を染めて言葉を漏らす葵咲。葵咲はただ単に幼馴染で手を繋ぐ事に対する照れからなのだが、銀時はそうは捉えられない。変な緊張感が走った。
(銀時:ヤバイ。何コレ。何なのコレ。桂(アホ)が変な事言うから変な方向にいっちまってんじゃねぇかァァァァァ。落ち着け、落ち着け俺。緊張?ホワッツ?緊張なんてモンは俺にはねぇ。そうだ、葵咲(こいつ)はキンチョウだ。)
銀時「大丈夫だ、葵咲はキンチョウ、蚊取り線香。葵咲は蚊取り線香、蚊取り線香、蚊取り線香…。(ブツブツ)」
葵咲「どういう事?」
途中から声に出ていた。しかもダメなところだけ。葵咲は自分が虫除け扱いされているのだと思い、ムッとした表情を浮かべた。だがそれも一瞬の事。すぐさま思い直したようにフッと笑みを漏らし、繋いでいる手を自らの口元に添えて銀時を見上げる。
葵咲「でもま、こうしてたら虫除けになるかな。」
銀時「あ?」
葵咲「銀ちゃんに悪い虫がつかないように。今日は私が護ってあげる。」
銀時「っ!!!」
『いや、男前すぎるだろォォォォォ!!』、銀時は心の中で叫ぶ。
本来なら逆の立場で使われる事が多いであろう台詞。幼気な可愛らしい女性に悪い男(むし)が付かないようにと男が女を護る意味合いで。それをここで使われた。生まれて初めて言われたその台詞に銀時は胸キュンだ。
だがそんな胸中知らず、葵咲はいつもの表情に戻ってニコニコ笑顔を浮かべる。
葵咲「血液型の問題かな?昔から蚊は私にばっかり寄って来てたもんね。」
銀時「あ、いや。ガチでキンチョウ(虫コナーズ)扱いしたわけじゃなかったんだけど。」
単なる天然だった事に、銀時はいつもの冷静さを取り戻した。