第10章 いくつになっても怖いものは怖い。
いつもどおりの総悟の姿を見た葵咲はほっと安堵のため息を漏らす。
葵咲「あっ、そーちゃん!大丈夫?無事??」
総悟「俺はこのとおり何ともねぇや。葵咲姉ぇは?こいつに何か変な事されやせんでした?」
土方「するわけねぇだろ!!」
葵咲「大丈夫だよ。それより、この停電って…。」
総悟「どうやらこの屯所だけじゃないみたいですぜィ。」
葵咲「そっか、じゃあ主電源見に行っても意味ないか…他の皆は大丈…。」
そこまで言ったところで、先程物音の聞こえた方から、また音が聞こえてきた。どうやら、すぐ近くの空き部屋に何かいるらしい。
葵咲「あっちの部屋から…。」
総悟「葵咲姉ぇは俺の後ろに隠れてて下せぇ。」
そう言って男らしく背中に葵咲を庇う総悟。総悟は葵咲から懐中電灯を受け取り、葵咲の少し前を歩いて行く。そんな総悟の背中を見ながら、何か想いを馳せる葵咲の表情は、酷く寂しそうなものだった。
物音のする部屋の前で三人は一度立ち止まり、頷いて互の意思を確認してから、勢いよく襖を開けた。そして部屋の中を懐中電灯で照らす。
「ギャアァァァァァ!!」
懐中電灯を照らした先には、今まで見たことも無い異形な姿をした謎の生物が立っていた。その姿は簡単に言うとスズメ蜂のような形だ。だがその大きさは人間とほぼ同等である。謎の生物は光を照らされた事に吃驚して悲鳴をあげたようだった。そしてその生物の姿と悲鳴に吃驚した三人もまた叫んだ。
「ぎゃあァァァァァァァ!!!!!」
三人の声に驚いた謎の生物は、障子を開けて縁側へと出て、飛び去って行ってしまった。