第95章 恋のキューピッドは大半が自己満足。
先程まで真っ赤だった銀時の顔は真っ青になる。冷や汗ダラダラ。一方葵咲は目を瞑ったまま差し出した手が、いつまでたっても握られない事に片目を開けて再び銀時を見やった。
葵咲「? あの…。」
銀時「わ、悪ィ。ちょっと厠。」
葵咲「え?」
速足で立ち去る銀時。近くにあった厠に入り、個室のドアを勢いよく閉めた。
(銀時:なんで!?なんで反応してんだ!俺の息子ォォォォォ!!鎮まれ!鎮まれェェェェェ!!俺の息子ォォォォォォォ!!)
普段見慣れない葵咲の顔に、銀時の男性として機能が反応してしまったらしい。葵咲は何が何だか分からないまま、呆然と突っ立って銀時の帰りを待つ。
そして数分後。銀時は平常心に戻って帰って来た。
銀時「わ、悪い。」
葵咲「え…まさか・・・・。手、洗った?」
銀時「洗ったに決まってんだろォォォォォ!握手会前にチン○触って来るアイドルヲタク(新八)と一緒にすんじゃねーよ!!んな変態プレイするかァァァァァ!!」
手を繋ぐ直前に厠に行った事で妙な誤解を受けてしまった。なおも疑わしい目を向ける葵咲だったが、銀時のあまりの剣幕に葵咲が折れた。
葵咲「じゃ、じゃあ…改めて、宜しくお願いします。」
そう言って少し照れながらも手を差し出す葵咲。自分が言い出した事なだけに、引っ込みがつかない。銀時は少しビクつきながらも葵咲の手を取った。そして手を繋いでいない方の手で顔を覆いがながら言葉を漏らす。
銀時「あああ…。(お持ち)帰り(し)てぇとか一瞬でも思った自分が嫌だァァァ…。」
葵咲「えぇっ?そんなに嫌だった?ごめん、今からでも遅くないし帰る?」
銀時「お前が思ってるのと意味違うから。」
葵咲「?」
上記、(お持ち)と(し)は銀時が発していない言葉の切れ端だ。実際に発したのは『帰りてぇ』という言葉。その意味合いは『葵咲をお持ち帰りしたい。』の意。だが葵咲は そのまんま『帰りてぇ』の意で捉えている為、会話が嚙み合わないのは当然であるが、銀時としても話せない本音であった。
桂の思う壺である現在の状況に銀時は嘆く。