第95章 恋のキューピッドは大半が自己満足。
結局、宿の女将さんにこの辺り一帯の観光スポットについて尋ねたところ、やはり今の時期は紅葉が見頃だと言われ、銀時と葵咲は紅葉狩りに。
場所は宿からさほど距離も離れていない為、歩いてその地へ赴く。
椿西にある寺、通称紅葉寺(もみじでら)。紅葉の名所という事で地元の人間からその愛称で親しまれているらしい。勿論、地元の住民以外も多くの観光客が訪れる場所。葵咲達が紅葉寺へと足を運んだのは夕方だが、寺の玄関口で既に多くの観光客で賑わっていた。
葵咲「凄い賑わってるね!女将さんが紅葉の名所って言ってたけど、ホントそのとおりだね~!」
歓喜の表情に満ちている葵咲に対し、銀時はしかめっ面を浮かべている。人の多さもそうなのだが、銀時には苛立つ要素が他にあった。
銀時「カップルばっかだな。この腐れリア充どもめが。」
葵咲「はいはい、嫉まないの。」
右も左もカップルばかり。カップルもしくは夫婦の組み合わせが ほとんどだったのだ。女子旅、男旅、一人旅といった観光客が見当たらない。これには銀時が居心地の悪さを感じるのも無理のない話。銀時は空気の読めない葵咲に対して怒りを露わにした。
銀時「じゃあお前彼女になれよ!俺の身にもなってみろよ!男の立つ瀬ねーんだよ!!」
葵咲「えっ?かっ、彼女…っ!?」
銀時「えっ。」
彼女というワードを聞いて『かぁぁぁぁ』っと顔を真っ赤にする葵咲。半分冗談で言ったつもりだったのだが、想定外の反応に銀時もつられて赤面する。
銀時「っ!!!」
これはもしや脈アリか!?ワンチャンいけるか!?そんな思考が銀時の脳裏を過る。
その場に変な空気が流れ、お互い赤面しながら見つめ合う。
だがここで葵咲が慌てたように両手を前でブンブン振りながら、きゅっと目を閉じて持論を述べた。