第95章 恋のキューピッドは大半が自己満足。
銀時の態度に疑問を感じる葵咲だったが、それ以上はツッコまず、今度は銀時達の部屋の前へと歩を進める。
葵咲「太郎ちゃんにも声掛けてみよっか。」
銀時「あっ、ちょ!」
折角こぎ付けたデート、桂を誘われては意味が無い…いやいや!違う違う!これデートじゃねーし!別にヅラがいたって良いしィィィ!!そんな言葉達が頭の中で木霊する銀時だったが、その隙にも葵咲は銀時達の泊まる部屋のチャイムを鳴らしていた。
ピンポーン。
チャイムが鳴ったと同時に中から声が上がる。
桂「『只今、留守にしております。ご用件のある方は発信音の後にお名前とメッセージをお話し下さい。ファクシミリの方は送信して下さい。ピーッ(桂裏声)』」
銀時「FAX送信ってなんだよ。腹立つなコイツ。」
葵咲「とりあえず出たくないって事は分かった。」
あからさまな居留守であるが、出たくないという意思は伝わってきた。そんな人間を無理に連れ出すわけにもいくまい。葵咲はフゥと溜息を吐くも、すぐに表情を変えて銀時へと笑顔を向けた。
葵咲「じゃあ二人で行こっか。」
銀時「えっ!?二人で!?」
葵咲「嫌なら一人で行くけど…。」
銀時「別に嫌とは言ってねーだろ!」
葵咲「?」
先程から銀時の様子がおかしい。銀時は桂に言われて“葵咲とのデート”を意識してしまっているだけなのだが、葵咲はそれを知らない。少し疑問に思うが、ここでも特に追求はせずにいた。
そして気を取り直してこれからの行先を相談する。
葵咲「どうする何処行く?」
行先については銀時も考えてはいなかった。葵咲からの言葉に、顎に手を当てながら『うーん』と唸る銀時。ここで葵咲が何かを思いつき、右手人差し指を立てながら、表情を弾ませた。
葵咲「…あ!折角のこの季節だし、『紅葉に行…』」
銀時「行“コウヨウ”、とか言ったらはっ倒すぞ。」
葵咲「・・・・・。」
ダジャレを真顔で抑制されてしまい、言葉を失ってしまう葵咲であった。