第95章 恋のキューピッドは大半が自己満足。
銀時「のやろ…!蹴飛ばすだけ蹴飛ばしてまた部屋に入りやがっ…。」
ここで突如、葵咲の部屋の扉が開いた。扉は勢い良く銀時の顔面にぶち当たる。
銀時「ぶっ!!」
葵咲「え?銀ちゃん!?ごめん!大丈夫?」
部屋の前に銀時がいる事など想定してなかった葵咲は、結構な勢いで扉を開けてしまったのだ。葵咲に非はないのだが、負傷させてしまった事について思わず口から謝罪の言葉が出る。銀時の鼻からは鼻血が一筋垂れていた。銀時は鼻を押さえながらも葵咲へと向き直る。
銀時「あ、ああ。」
葵咲「どしたの?」
銀時「え!?いや、その…。」
自分の部屋の前で一体何を?そんな疑問を抱いた葵咲だったが、突然その質問を投げ掛けられて銀時はしどろもどろ。葵咲をデートに誘おうとしていた、とは言えずにいる。
様子がおかしな銀時には気付いていないのか、葵咲は銀時に満面の笑みを向けた。
葵咲「あ、良かったら今から一緒に出掛けない?」
銀時「えっ!?」
まさか葵咲の方から提案してくれるとは思ってもみなかった。銀時の心臓は高鳴り、思わず目を見開く。ちなみに葵咲は墓参りを終えた事で、いつもの着物に着替え済だ。もとより葵咲から誘うつもりだったのかもしれない。
あたふたする銀時を無視して葵咲は笑顔で続けた。
葵咲「夕食までまだ少し時間あるし、部屋にいるのも退屈だしさ。どう?」
現在の時刻は十六時を回ったところ。夕食までまだたっぷりと時間がある。その事を補足で伝えると、銀時は目を瞑り、腕組みしながら答えた。
銀時「ふ、フン!そんなに言うんなら出掛けてやっても良いけど!?別に俺は誘われたから行ってやるだけなんだから!仕方なく、なんだから!これはデートなんかじゃないんだからね!」
葵咲「なんで急にツンデレなの。」