第95章 恋のキューピッドは大半が自己満足。
桂「恋する女は綺麗さ~♪」
銀時「うるせェェェェェ!絶妙に腹立つんだよ!つーか多分現代っ子その曲知らねーからな!俺ら世代でも原曲知らねーから!“いいとも”のコーナーで流れてたの聴いた事あるレベルなんだよ!!」
真面目なのかそうでないのか。対処に困る銀時は憤りを見せる。そして桂は再び真面目な表情へと戻して話を続けた。
桂「俺は、葵咲は真選組の中に好きな男がいるのではないだろうかと見立てている。俺達と真選組(ヤツら)との狭間で…板挟み状態に苦しんでいる、そんな苦悩の表情だった。」
銀時「あの時は絶対違うから。お前のその見解間違ってっから。」
惚れ薬の一件の真相を知る銀時は的確なツッコミを入れる。桂の誤った見解を指摘するも、当の桂は聞いていない様子。真面目な表情から申し訳なさ溢れる苦汁の表情に変えて項垂れた。
桂「銀時、本当にすまない。お前の気持ちを知っていながら…!」
銀時「つーかなんで現在進行形みたいになってんの。俺が今でも葵咲(あいつ)のこと好きみたいに話進めんのやめてくんない。」
ここで原点に返る銀時。そもそも、そうなのだ。桂の話では銀時が今も葵咲に想いを寄せているかのような口ぶり。確かに初恋の相手が葵咲である事を明かした銀時ではあるが、決して今も想いを寄せているとは言っていない。誤った見解のまま話を進められる事にも腹が立ってきた。
そんな銀時の苛立ちに桂は気付いておらず、自分に酔いしれている様子だ。芝居がかった大きな身振り手振りを混ぜながら話を続ける。
桂「俺は葵咲(あいつ)に…好きなものを好きと言って良いと、後押ししてしまった…。葵咲があまりにも不憫に思えてな…。すまない、銀時…。本来ならお前のキューピッドとならねばならぬところを…俺は…っ!」
銀時「おい、誰かコイツ止めてくれよ。もう敏感なんだか鈍感なんだか分かんねーよ。」
惚れ薬編で(あの時だけ)葵咲が恋をしていたのは確か。その事に気付いていた桂は敏感と言えば敏感なのだが、その相手が自分であった事には一切気付いていない。その点では間違いなく鈍感である。