第94章 タイムカプセルの中身にも格差がある。
少ししてから桂が戻って来た。
桂「すまない、待たせたな。」
長谷川「じゃあ行くか。」
一行はタクシーへと乗り込む。席は先程のとおり。葵咲が助手席で男二人は後部座席だ。
車が発車して間もなく、銀時は前の二人に聞こえないぐらいの小声で桂に話し掛けた。
銀時「どうだった?」
桂「付近を少し見て回ったが、真新しい痕跡はあるものの、誰か来たり村から出たりする人の気配はなかった。そっちはどうだ?」
銀時「こっちも一緒だ。人っ子一人いねぇ様子だったが、生活してる雰囲気はあった。それに、何かの気配があった。確認は出来てねぇけどな。」
桂「…何か匂うな。」
銀時「ああ。」
いつになく真剣な表情の二人。そんな二人に気付いていない葵咲と長谷川は再び会話を弾ませている。
そんな道中、窓の外の景色が ふと葵咲の視界に飛び込む。葵咲はその景色へと目を向けながら声を上げた。
葵咲「何です?あの大きな建物。」
長谷川「あぁ、あれがさっき話した工場だよ。」
この地には似つかわしくない程の大きな建物。それは大江戸ドームぐらいの規模である。二人の会話を聞いて銀時達もそちらへと目を向けた。
葵咲「へぇ~!確かにあれだけの大きさでしたら人も増えますね。」
長谷川「だろ?」
楽しげに会話を弾ませる葵咲と長谷川に対し、後ろの二人は深刻な表情のまま。呟くように銀時が言葉を漏らす。
銀時「工場…ねぇ。」
桂「・・・・・。」
そうしてタクシーは工場の横を通り過ぎ、椿西の旅館へと向かった。