第10章 いくつになっても怖いものは怖い。
葵咲はその横に正座して座り、じっと土方の方を見つめる。
暫しの沈黙が流れた。
土方「・・・・・。」
葵咲「・・・・・。」
土方「・・・・・。」
葵咲「・・・・・。」
土方「・・・・・って眠れるかァァァァァ!!」
変に意識してしまって眠れなかった土方は布団を蹴脱いで起き上がった。それを聞いた葵咲は至って真面目に言った。
葵咲「添い寝とかした方が良い?」
土方「余計眠れるかァァァ!!ガキじゃねぇんだぞ!!」
葵咲「別に子供扱いなんてしてないってば。でもご所望なら子守唄もつけるけど。」
土方「そういう意味じゃねーんだよ!!お前そういうのホンット疎いのな!!」
葵咲「?」
風呂場の事件に引き続き、何なんだこの女は!そう思って苛立つ土方だったが、葵咲は土方の言っている意味が分からず、目をぱちくりとさせていた。そんな様子の葵咲を尻目に、土方は頭をかきながら立ち上がった。
土方「もういい、俺ァ近藤さんトコ行って…。」
そこまで言ったところで、急に電気が消えた。
葵咲「えっ、何?停電!?」
吃驚した土方は、停電と同時に立ち上がった葵咲に思わず抱きついてしまった。
土方「のわァァァァァ!!」
葵咲「ちょ、土方さん!」
はっと我に返り、急いで離れる土方。
土方「うォォォォ!!違う!違うから!セクハラとかそういうんじゃねぇから!!ちょっと吃驚しただけだからァァァァァ!!!!!」
葵咲「わ、分かったってば、だから落ち着いて。」
これには逆に驚かされた葵咲だが、すぐに冷静さを取り戻して土方を宥めるように言った。
土方「わ、悪ィ。」
葵咲「私は主電源見に行って来るね。」
そう言って部屋を出ようとした葵咲の腕を、土方は勢いよく掴んで言った。
土方「ちょっと待てェェェ!!お前一人じゃ危険すぎんだろォォォ!!俺も一緒に行ってやるってェェェ!!」
葵咲「・・・・・あ、ありがとう・・・・・。」
呆れ返った葵咲だったが、土方をこのまま一人放ってもおけないので、一緒に主電源のある動力室のような部屋へと向かうことにした。