第94章 タイムカプセルの中身にも格差がある。
段々疑心暗鬼になってくる長谷川。今のところまともな物が何一つない。長谷川は期待せずに葵咲の音読を待つ。
葵咲「『葵咲へ。』…あ、松陽先生からだ。」
三人「!」
これはひょっとすると、とんでもないお宝なのではないか。松陽から葵咲に宛てて書かれた手紙。数十年後の姪っ子を想って綴られた手紙。きっと感動するような想いが綴られているに違いない。ハンカチを用意しておいた方が良いだろうか。長谷川は今度こそタイムカプセルの醍醐味とも言える手紙の発掘に、心を踊らせた。そして葵咲が手紙を読み上げる。
葵咲「『晩御飯のおかずの肉じゃが、タイムカプセルに入れておきました。チンして食べて下さいね。松陽。』」
長谷川「タイムカプセルの使い方ァァァァァ!!なんで冷蔵庫みたいになってんの!?おかしいだろ!!」
葵咲「そうだよね。手紙もここに入れられちゃったら、おかずの場所分かんないじゃんね。」
長谷川「そっちィ!?」
確かにタイムカプセルとは“後に”開けるもの。だが“後で食べる”であろう肉じゃがを入れるのは間違っている。そしてそれに対する葵咲のツッコミも間違っている。その事について指摘する長谷川だが、それに関して葵咲はスルーして目を細めながら当時の記憶を手繰り寄せる。
葵咲「結局この日、おかずの場所分かんなくて白ご飯だけ食べる事になったんだよね。」
銀時「そういや先生の口癖、『今日のおかずは何処に隠そうかな。』だったっけ。」
葵咲「あー。それでか~。でもそれならせめて地図とか置いといて欲しいよね。」
長谷川「なんで宝探しみたいになってんだよ!毎晩ハードル高くね!?ほとんどイジメじゃん!」
葵咲の厳しい過去に心を痛めた長谷川だが、気にせずのほほんと語る葵咲を見て呆れ果てた。まぁ当人が気にしていないなら良いか。そんな事を思いながら長谷川は小さくため息を吐いて話題を切り替える。