第93章 世間は狭い。
そうして一行は目的地、松陽を埋葬した墓地へと到着。長谷川はタクシーで待つ事となり、三人は江戸で購入した用具等を持って墓地へ。
葵咲「お墓、建ててくれてたんだね。」
桂「攘夷戦争当時は簡易的な物しか建てられなかったからな。戦争が終わって落ち着いてから、改めてここに建てたんだ。やはり想い出の地に建てるのが良いだろうという話になってな。」
桂達の計らいに温かいモノを感じる。尊敬の念と、清らかなる温情。自分の伯父を本当に大切に想ってくれている事に、葵咲は至極嬉しく思った。
ちなみにここの墓には実際に骨は入っていないとの事。後で建てたが故に入れられなかったそうだ。いわゆる慰霊碑のようなものだ。
そんな会話をしながら霊園を歩く三人。葵咲は松陽の墓に初めて訪れる為、明確な場所が分からない。それを二人に問うた。
葵咲「どのあたりになるの?」
銀時「何処だっけ?」
桂「・・・・・。」
葵咲「ちょっと、大丈夫?」
どうやら二人も明確な場所を覚えていないようだ。人口の少ない土地とはいえ、結構大きな規模の霊園である。広さとしては学校の校庭以上あるのではないだろうか。そんな中から松陽の墓を見つけ出せるのか。早くも不安を感じる葵咲。少し呆れ顔になりつつ、銀時達の顔を眺めるが、銀時は焦る様子もなくボリボリと頭を掻く。
銀時「草ぼーぼーになってんじゃね?」
桂「そうだな、それを目印に探すか。」
まぁ幸い時間はたっぷりある。二人の記憶をあてにするより片っ端から探した方が早いかもしれない。用具等を江戸で購入しておいて良かった。