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銀魂 - 雪月花 -

第93章 世間は狭い。


失礼千万である。だが、江戸より遥かに人口が少ないのは明らかであり、建物も高層ビル等は見当たらない。そんな土地にいきなり異動させられたとあれば、窓際と思われるのも仕方ない事だろう。それは転勤初日、長谷川も感じた事であった。その事を思い出した長谷川は平常心に戻って言葉を紡ぐ。


長谷川「いや、正直俺も最初はそう思ったんだけどよ。」

銀時「オメーもディスってんじゃねーか。」

長谷川「この近くに新しく工場が出来てな。町の開発計画とか上がってるらしくて人も増えて来てんだと。」

葵咲「へぇ~。」


葵咲達はこの地に対して幼い頃の記憶しかない。のどかな幼少期を過ごしただけに、町の開発計画等想像がつかず、思わず感嘆の声を漏らした。
故郷が開けて行くのは嬉しい半面、少し寂しい気持ちもある。時代の波に乗り遅れないように開発されて欲しいという願いと、想い出の場所として自分の知っている土地のままであって欲しいという想い…。葵咲はそんな複雑な気持ちを噛み締める。そんな葵咲をよそに、長谷川は話を続けた。


長谷川「まだ鉄道は開発されてねぇし、バスもあんま路線や台数がねぇから交通手段がないらしくてさ。それでそういったモンが出来るまで転勤になったってわけ。」

葵咲「あ。そういえば駅前に結構沢山タクシー停まってましたね。この地にしては珍しいなって思ったんですけど。」

長谷川「そうそう、そういう事。」


列車から降りて駅のロータリーに訪れた時、葵咲自身も違和感を感じていた。その時は違和感について明確な答えは見出せていなかったのだが、長谷川との会話でその答えがタクシーの台数の多さであったと気付かされた。
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