第93章 世間は狭い。
目的地へと到着した葵咲達。列車を降りた三人は、懐かしい気持ちで辺りを眺めた。着いた場所は萩。のどかな土地で風も空気も至極美味しい。江戸とはまた違った心地良さに、葵咲は大きく深呼吸しながら伸びをする。
葵咲「んー!あっという間に着いたね~。」
銀時「そりゃあ お前、あんだけぐっすり寝てたらそうなんだろ。」
結局あの後、葵咲は一度も起きる事無く銀時の肩を借りて到着までずっと眠っていたのだ。その事を指摘され、何かを思い出したように葵咲は慌てて銀時へと向き直る。
葵咲「あ、ごめんね、肩借りちゃって。トイレとか大丈夫だった?肩凝ったりしてない?」
銀時「そんな事より着物ヨダレまみれにした事を謝ってくれ。」
どうやら口を開けて眠っていたらしい。銀時の肩は葵咲のヨダレまみれになっていた。肩を貸した事自体は銀時は何とも思っていないが、ヨダレまみれの着物には納得いかないものがあった。
だがその事に関しては、ばつが悪くなったのか、葵咲は敢えてスルーして話題を切り替える。
葵咲「ここからどうしよっか?」
銀時「ねぇちょっと。無視しないでくんない。」
更に銀時の言葉をスルーして葵咲は辺りを見回す。事前の調べによれば駅からバスは出ているものの、葵咲達が目的地とする墓地の近くは通らず、一番近くのバス停でも3km以上距離があるようだった。付近にレンタカーがないか見回すも、そういった店舗も見付からない。が、駅前ロータリーには何台もタクシーがあった。ここはタクシーに乗り込むか…。葵咲は二人に意見を求める。
葵咲「どうする?結構距離あるし、タクシーで行く?」
桂「そうだな。」
そうして三人はタクシー乗り場へと足を向け、一番先頭に停車していたタクシーへ。後部座席、運転手の後ろの席に桂が。助手席の後ろに銀時が座る。そして助手席へと葵咲が乗り込んだ。