第92章 長距離列車で食べる駅弁はいつもより美味しく感じる。
銀時は葵咲の上体を起こし、シートに持たれ掛けさせた。
銀時「ったく…。」
フゥと溜息を吐きながら、通路側の肘掛に頬杖を付く銀時。そんな銀時の肩に葵咲がコツンと もたれ掛かった。
銀時「!」
葵咲「スースー…」
銀時「・・・・・。」
銀時の肩で眠る葵咲。そんな状況に銀時は少し頬を染める。そんな何とも言えない初々しい表情を浮かべる銀時を桂がニヤニヤと眺めていた。
銀時「なんだよ。何ニヤニヤしてんだよ。気持ち悪ィな。」
桂「内心ニヤニヤしているのは お前の方ではないのか?」
銀時「あぁ?」
桂からの指摘にイラッとする銀時。そんな銀時を見て桂は なおもからかう。
桂「いや~俺はお邪魔だったかにゃ~。」
銀時「てめっ!いい加減にしろよ!!くだらねー事言っ…」
からかわれた事にカッとなる銀時。思わず立ち上がろうとするのを桂が止める。
桂「おっと。立ち上がると、また葵咲が倒れるぞ?」
銀時「っ! ぐぬぬぬ。」
やられっぱなしで、悔しさのあまり苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる銀時。やり返そうにもやり返せない。そんな銀時を見て最初はニヤニヤと勝ち誇ったような表情を浮かべていた桂だったが、次第にその表情を曇らせていく。
桂「・・・・・。」
銀時「? どうした?」
その変化に気付いた銀時は小首を傾げて尋ねた。桂は暗い表情を浮かべながら言葉を押し出す。
桂「銀時、お前には…謝らなければならない事がある…。」
銀時「なんだよ?どうしたんだよ、急に。」
いつになく真剣な表情の桂。そんな桂を見て銀時も自然と真剣な表情になる。話すよう促すも、桂は一呼吸置いて首を横に振った。
桂「…葵咲に聞かれてはことだ。宿に着いてから…部屋で話そう。」