第10章 いくつになっても怖いものは怖い。
それから約一時間後の事、仕事や用事、夕食を済ませた土方は早々に布団を敷いた。眠る準備は万端で、もう私服にも着替えている。
土方「こういう日は早く寝るに限るな。」
布団に入ろうとしたその時、土方の部屋の襖をトントンと叩く音がした。その時もやはり土方は人一倍吃驚する。
土方「だっ!誰だァァァァァ!!!!!」
そう土方が叫ぶと、襖が開いた。そこには吃驚した表情の葵咲が立っていた。
葵咲「おっ、お茶を…。」
なんだ市村か。
そう安堵のため息を漏らした土方だったが、八つ当たりのように葵咲に怒号する。
土方「てめぇ!今何時だと思ってやがる!!」
葵咲「・・・・・まだ七時なんですけど…。」
まだ夜は長い。そう思って気を利かせてお茶を運んだつもりだったのだが、何故か怒られる事に戸惑う葵咲だった。なんとも言えない表情で立ち尽くしていると、土方が言葉を付け加えた。
土方「もう寝る時間じゃねぇか。」
葵咲「いつももっと遅くなかった?」
土方「明日朝早ぇんだよ。」
葵咲「明日の予定って確か…九時から…。」
土方の秘書的な役割も果たしている葵咲は、土方の予定も把握している。土方の言葉に対して、全て冷静に対処する葵咲だったが、それが逆に怒りに触れてしまったようだ。
土方「ごちゃごちゃうるせぇよ!とにかく俺は今から寝るんだよ!邪魔すんじゃねェェェェ!!」
葵咲「…はいはい、じゃあ私はこれで…。」
何が何だか分からず、これ以上何か言っても機嫌を損ねるだけだと思った葵咲は、お茶だけ置いて、その場を立ち去ろうとした。
だが、部屋を出ようとしたその時、着物の裾が何かに引っ張られて動けなくなる。