第10章 いくつになっても怖いものは怖い。
気を取り直して土方はタバコに火を点けながら言う。
土方「とにかく泥棒なわけねぇだろ。ここを何処だと思ってんだ。警察に泥棒入る奴なんざ聞いた事ァねぇよ。」
葵咲「あ…それもそうかぁ。・・・・・じゃあ…幽霊か何かだったのかな?」
何気なく言った一言だったのだが、その言葉に身体を凍りつかせるのはこの男。
土方「!? ゆゆゆ、幽霊とか信じてんの?お前!ばっかじゃねぇの!?お前いくつ??いっ、いるわけねぇだろ!んなもんんん!!」
葵咲「…土方さん?」
尋常じゃない動揺っぷりに、今度は葵咲が呆れ顔だ。蚊のような天人との事件から土方の怖い物を知っている総悟は、葵咲の肩に手を置き、ため息交じりに首を横に振りながら言った。
総悟「葵咲姉ぇ関わっちゃだめだ。バカが移りやすぜ。」
そして総悟と葵咲は土方の方を見やる。その目は至って冷たい。
土方「なっ!なんだよ、その目は!言っとくけど俺は信じてねぇから。迷信だと思ってっから!」
葵咲「はいはい。」
土方「んだよ!なんなんだよ!その子供(ガキ)をあやす様な言い方はァァァ!!」
土方からは目を逸らし、まるで母親のように言い捨てる葵咲に、土方は怒りを見せたのだった。
葵咲はそんな土方には構わず、自分の頬に手を当てながら、考えこんだ。
葵咲「でも…なんだったんだろう…。確かに誰かの、何かの気配はあったんだよね…。」
土方「バカ言ってねぇでさっさと仕事に戻るぞ。ほら、お前らも自分の部屋帰れ。」
葵咲「はーい。」
総悟「へーい。」
一先ず安全が確認されたところで、集まった隊士達は解散した。
土方も自室へと戻ってきた。
土方「…ったく。くだらねぇ。」
そう口では言っているものの、葵咲が嘘をついているようにも思えず、少し考え込んだ。だがどう考えても泥棒が屯所に入るとは思えない。これはやはり幽…その先を思い浮かべようとした時、背筋を悪寒のようなものが走った。
土方「・・・・・。」
その時、ガタッ!と物音がした。当然、土方は飛び上がるような思いで吃驚する。
土方「!!!??? ・・・・・・・・・・。」