第92章 長距離列車で食べる駅弁はいつもより美味しく感じる。
まず銀時に手渡されたのは“甘露ずくし”というタイトルの弁当。文字通り、おはぎや杏仁、わらび餅等、沢山和菓子も入った弁当だった。そして次に桂に弁当を手渡す。桂が選んだのは“日本の夜明け”弁当。ご飯が日の丸になった幕の内弁当である。なお、デザートとしてフルーツポンチが付いている。最後は葵咲。葵咲は蟹チラシを選んでいた。
三人の様子を除き見ていた近藤は、思わず声を上げる。
近藤「あっ!あの駅弁俺も食べたかったやつ!」
そう、桂が買った日本の夜明け弁当は桂の分がラスイチだったのだ。目の前での売り切れ、しかも桂に先を越された事に悔しそうな表情を浮かべる近藤。そんな近藤には構わず、土方は面白くなさそうな顔を浮かべていた。
土方「・・・・・。」
松本「羨ましいですか?」
突如掛けられたその言葉に、心臓をドキリとさせる土方。目を見開いて松本の方へと顔を向けた。
土方「は!?何が!?俺ァ別に一人だって良いし!?」
その返しを聞いて松本は不敵な笑みを浮かべる。
松本「誰も“あの輪の中が”、なんて言ってませんよ?私は貴方があの弁当を物欲しそうに見てるな~と思ったのですが。そうですか、三人の仲(そちら)の方が気になってましたか。」
土方「っ!」
松本にからかわれるも、図星の土方は言い返せない。なおもクスクスと笑う松本に、ヒクヒクと引きつり笑いを浮かべるしかなかった。
土方「…のやろ…。」
松本「フフッ。」