第92章 長距離列車で食べる駅弁はいつもより美味しく感じる。
そんなやり取りの末に提案された今回の墓参り兼、郷帰り。当初は桂の娯楽に付き合わされるだけだと思っていたが、楽しそうな笑顔を浮かべる葵咲の様子を見て、桂の提案は悪くなかったかも、と思った。
じっと自分の横顔を見つめる銀時の視線に気付く葵咲。葵咲はふと顔を横に向けて銀時に問う。
葵咲「ん?何?どしたの。」
銀時「いや、別に。」
フッと笑みを漏らしながら視線を逸らす銀時。そんな銀時を見て葵咲は胡散臭そうな顔を浮かべる。
葵咲「なに?人の顔見てほくそ笑んで気持ち悪いなぁ。」
銀時「別にほくそ笑んでねーよ!」
どうやら無意識のうちに微笑が漏れていたらしい。その事を指摘された銀時は頬を赤く染める。それを見た葵咲は、何かを思いついたようにパンッと手を叩いた。
葵咲「あっ、お腹空いたの?それならそうと早く言ってよー。駅弁食べよ!銀ちゃんが欲しがるから、私も仕方なく一緒に食べてあげるんだからね。」
銀時「オメーが食いてぇだけだろ!俺を出汁に使ってんじゃねーよ!」
そう言って葵咲は銀時のツッコミは無視し、笑顔でガサガサと乗車前に購入した駅弁を広げ始めた。