第92章 長距離列車で食べる駅弁はいつもより美味しく感じる。
ひとしきりUNOを楽しんだ後は談笑タイム。勿論葵咲の仕事には守秘義務があり、しかも相手が攘夷志士なだけに仕事の愚痴等は話せないが、日常の楽しかった事や嬉しかった事、他愛ない話を笑顔で語る。
銀時はそんな葵咲の横顔をじっと見つめながら、今回三人で出掛けるに至った経緯を思い出した。
遡る事、数週間前。
桂は歌舞伎町の路地裏へと銀時を呼び出した。
銀時「墓参り?」
桂「うむ。葵咲も交えて三人で。久々に懐かしのあの地へ行かんか?」
万事屋へと足を運ぶと新八や神楽もいる。流石に二人の前で三人で出掛けたいとは言いづらかった。いや、言っても構わないが、言うと二人はついてくると言い出し兼ねない。それを避けたかった為の呼び出しだった。
桂からの唐突な提案に、銀時は目を見開くも、すぐに元の死んだ魚の目へ。眉根を寄せて頭をガシガシと掻きむしる。
銀時「松下村塾があった場所?え~めんどくせぇよ~。お前一人で行って来いよ。葵咲もどうせ忙しくて無理だって。」
桂「俺一人で行って何の意味がある!」
何か意図があっての提案らしい。面倒臭そうな顔を浮かべながらも、一応桂の声に耳を傾ける銀時。聞く姿勢を見せる銀時を見て桂は改めて腕組みをし、その理由を静かに語り始める。
桂「この間、葵咲の様子がおかしかったのが気になってな。」
銀時「ああ。惚れ薬(アレ)はホントにおかしかっただけだから気にしなくていいよ。」
どうやら鈍感な桂も葵咲の様子がいつもと違う事には気付いていたようだ。だが全ての事情を知っている銀時は心配いらないとその話を終わらせようとする。だが桂はなおも食い下がり、話を続けた。
桂「まぁそう言うな。普段から男共の巣窟で生活している葵咲だ。たまにはそういった気晴らしも必要だろう。」
銀時「誘い出すのが男二人じゃ意味ないんじゃないの。」
的確なツッコミを入れる銀時だったが、そんな銀時のツッコミを桂は無視して、懐から“まっ●る”と“る●ぶ”を取り出した。
桂「あのあたりは今、紅葉が見頃らしいしな。山々の彩りを見ながらご当地グルメを食べるのも悪くなかろう。」
銀時「単にオメーが旅行行きたいだけじゃね?」