第92章 長距離列車で食べる駅弁はいつもより美味しく感じる。
二人のやり取りは土方と山崎にとっては見慣れた光景だが、松本としては初めて目の当たりにするもの。そもそも新八と神楽とは初対面だ。一連のやり取りを眺め、会話に一区切りついたところで松本が山崎に問い掛けた。
松本「この子達は?」
山崎「ああ、松本先生は初めてですかね。万事屋の旦那のところで働いてる新八君と…」
神楽「神楽アル!」
新八「初めまして。」
初めて見る松本の姿に、新八と神楽は向き直る。神楽は挙手して自己紹介し、新八は深々と頭を下げた。
そして新八も山崎に松本の事を尋ねる。近藤・土方・山崎と行動を共にしているという事は真選組関係者なのだろうが、隊士というにはあまりに華奢で気品がある。関係性を疑問に思ったのだ。
新八「山崎さん、この方は?」
山崎「真選組の専属医を務めてもらってる松本先生。」
松本「お初にお目に掛かります。」
なるほど、と新八の中で腑に落ちるものがあった。この馬鹿達が蔓延る銀魂世界で初めてまともな話が出来そうな人物に出逢えた気がした。だがそんな新八の嬉しい気持ちは次の瞬間地に落ちる事に。
松本「そうですか、銀時さんの元で…。・・・・可哀想に。」
新八「ちょっとォォォ!?初対面開口一番言う台詞じゃないでしょソレ!明らかに万事屋の事蔑視してますよね!?」
まさか、いきなり哀れみの言葉を掛けられるとは。理由が分からずツッコむ新八に、松本は更に哀れむような表情を向けながら小さく首を横に振って理由を述べた。
松本「どうせろくに給料ももらってないんでしょう。」
新八「当たってっけど!何この人!洞察眼が鋭すぎるよ!!」
理解者が現れたと言うべきなのか、複雑な心情に囚われる新八なのであった。