第92章 長距離列車で食べる駅弁はいつもより美味しく感じる。
「すみません、弟さん達の乗車賃もちゃんとお支払頂けますか?」
近藤「弟?俺に弟なんて…」
片眉を上げて小首を傾げる近藤。話が見えない。立ち止まる近藤に釣られて、土方達他のメンバーも足を止める。そんな一行の背後をすり抜け、見知った顔の子ども達が列車に乗り込もうとした。
新八「じゃあ兄上、後は宜しくお願いします。」
神楽「頼りにしてるネ。」
聞き覚えのある声を聞いて振り返る近藤達。そこには新八と神楽がいた。どうやら新八と神楽も銀時達の後を追ってきたようだ。だがまさかの長距離列車の乗車に、お金の無い二人は、たまたま見付けた近藤を利用しようとしたらしい。この所業について、近藤はプラス思考を働かせて頬を赤らめた。
近藤「新八くんんんん!?ま、まさかお妙さんが俺の事を認め…!?」
新八「違います。あぁ、姉上にはこの事、絶対に言わないで下さいね。」
まぁ当然と言えば当然か。その場凌ぎの対応を予測していた土方と山崎は顔色一つ変えずに二人のやり取りを傍観している。だが近藤は食い下がるように新八の両肩を掴みながら地面に膝を突いた。
近藤「どういう事ォォォォ!?金払わせるんなら、お妙さんに俺の優しさ伝えてよ!せめて!!」
新八「嫌ですよ。僕が姉上に勘当されちゃうじゃないですか。」
近藤「酷くね!?都合の良い時だけ弟面しないでくんない!明らか俺の事ただのATM扱いじゃん!!そんなところから家族の絆は綻びてくんの!一家の大黒柱は外に癒しを求めて家から出て行っちゃうの!」
新八「あ、じゃあこれっきりで兄弟の契りは終わりですね。短い間でしたが有難うございました。」
そう言って新八はパッパッと近藤の手を振り解いて頭を下げる。そんな塩対応をされて、近藤は更に大きな叫び声を上げた。
近藤「ホントに短すぎるよ!俺電車賃払っただけじゃんんんん!!うそうそ!これからも末永くお願いします!!炭治郎と禰豆子みたいな絆で!!」