第92章 長距離列車で食べる駅弁はいつもより美味しく感じる。
ひとまず、如何わしい方向に行く心配はないと見た土方達は、引き続き葵咲達の尾行を続ける。
ホームセンターで買い揃えた墓参りと思われる備品は、仏花、線香、蝋燭を葵咲が持ち、その他は銀時と桂が分けて持っている。三人は和気藹々とした雰囲気で駅の方へと歩いて行った。
近藤「何処まで行くつもりなんだ?」
駅に着いた三人は駅弁を購入。今の時刻はまだ午前十時を回っばかり。ここから駅弁を購入して列車に乗るとなると、まぁまぁの長時間乗車が予想された。それを感じた山崎が思わず意見を零す。
山崎「あの用具一式、なんで現地で買わないんですかね。」
三人いるとはいえ、なかなかの大荷物だ。宿泊用と思しきボストンバッグも持ち合わせている為、尚更である。しかも購入したのはゴミ袋や軍手等、特にブランド等拘りのない、何処でも手に入りそうな用具。わざわざこちらで買って行かずとも、現地で調達した方が良いのでは。そんな素朴な疑問だった。
その疑問に対しては松本が、少し視線を上げて考える素振りを見せた後に答える。
松本「行先はあまりお店がないような田舎なのかもしれません。もしくは現地のお店状況が分からないとか、購入時間の短縮など、スケジュールを考慮してこちらで購入する事にした、とか。」
なるほど。確かに慣れない店で買うより、行き慣れた店で買う方が売場や品揃えも分かるし効率が良い。ましてや行った先にあると思っていた物が売られていなかったら途方に暮れる。説得力のある松本の見解に、山崎は小さく頷いて葵咲達へと視線を戻した。
葵咲達は九州方面行きの列車に乗る。土方達も三人の後を追おうとしたその時だ。改札口の方から何やら揉めているような会話が。
「駄目だよ君達、切符買ってもらわなきゃ。保護者の方は?」
「兄があそこに。」
「列車代はゴリ兄ぃから領収してヨ。」
土方達が列車に乗り込もうとした時、駅員が近藤の肩を掴んでその行動を引き止めた。振り返った近藤はきょとん顔。引き止められる理由が分からない。怪訝な顔を駅員に向けると、駅員がスッと右手を差し出してきた。