第90章 女の勘は結構当たる。
屯所前。
安定の屯所前スタンバイの銀時達。この張り込み・尾行生活にも慣れてきた。
銀時「やっと最終日だな。」
やれやれ、といった様子でため息を吐く銀時。やっとこの尾行という拘束から解放される事を安堵する銀時に対し、一郎兵衛はここまで特に大事には至らなかった事に対して安堵の表情を浮かべている。
一郎「このまま何事もなく終わるのを願うのみだ!今日も雨の予報だったからな。準備はばっちりだ。気張って見届けようぜ。」
銀時「一日中張り込む気満々だな、オイ。」
今日も尾行の準備は万全の様子。二人が屯所の入口を見張っていると、中から真剣な面持ちの葵咲が出てきた。二人は身構える。そして葵咲が振り返らずに歩き出した事を確認し、いざ尾行開始。
葵咲「・・・・・。」
一郎「何処行くんだ?」
そうして葵咲が赴いた先は、北斗心軒。ご存知のとおり、幾松の経営するラーメン店だ。
葵咲は北斗心軒の前で立ち止まり、中の様子を伺う素振りを見せるも、通り過ぎる。それを何度か繰り返す。そしてその後、近くの電柱の陰に隠れながら北斗心軒の方をじっと見据えていた。
一郎「なんだ?葵咲のやつ、あのラーメン屋に何かあんのか?」
銀時「・・・・・。」
北斗心軒がどういう場所なのか知らない一郎兵衛は怪訝な顔を浮かべる。だが北斗心軒を知っており、葵咲の行動の意味を察した銀時は、少し曇った表情で押し黙った。
山崎「ラーメン屋に来るなんて珍しいですよね。桂の事はもう良いんですかね。」
銀時「いや、ここは…。ってなんでオメーがここにいるんだァァァァァ!!」
突如現れ、いつの間にか銀時達に紛れ込んでいた山崎。その自然な溶け込み具合に銀時は驚いて身体をのけぞらせる。流石は圧倒的地味さを売りにする監察だ。その存在感の無さには銀時も脱帽せざるを得ない。そんな山崎だが、特に表情を変える事もなく銀時の質問に答えた。
山崎「だって今日は例の薬の効力最終日でしょ?一応監察として見届けないと。」
腐っても真選組監察。その職務に責任は持っているようだ。だがその仕事のほとんどは銀時達に任せ、最終日だけ確認。ちゃっかりした要領の良さに、銀時は自分達が体よく扱われていると苦笑いを浮かべた。